【不動産の教科書】手付金について【#1】

ミスド今池にて執筆

こんにちは。
不動産エージェントの満月?です。

よく「不動産は人生で1番大きな買い物」と言われますが、そんな大きな買い物をするのに何の知識もなく不動産会社に飛び込むのは大変危険です。

私も営業をしている身なのでよく分かりますが、お客様が無知であればあるほど簡単に成約までまとまります。お客様にとって最適な提案であれば時短になることは決して悪いことではありませんが、悪意のある営業であったり、提案力が未熟な営業ではお客様にとって非常に不利益になりかねません。

だからブログを通して不動産購入の知識を持っていただき、そういった悪意のある営業マンや、知識のない未熟な営業から自分を守れるようにして欲しいと思い、記事を執筆しました。

まずは第1段、「手付金」についてです。

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手付金の役割

まずは手付金の役割についてです。

手付金とは原則、「解約手付」のことを指します。

手付とは、一方的に支払うお金のことを意味します。

手付の頭に解約がつくので、解約をするときに一方的に支払うお金ということになり、ペナルティと思っていただいて間違いはありません。

不動産売買契約は、売主と買主が互いに契約内容に合意をし、その内容が記された書面(契約書)に署名押印をすることで成立します。

契約が成立したあとは、売主は販売活動をやめ、2番手以降の購入希望者の方にはお断りの連絡を、それから住み替えの場合にはご新居への引越し手続き等を進めていきます。

買主は住宅ローンの申し込み手続きをして融資を受けられる準備をします。
引越しの準備も進めていきます。

このようにお互いが次のステップへ進めていく中で、一方的に「購入(売却)をやっぱりやめた」と言われてしまうと大変に困ってしまいます。

そのために紙切れ一枚の契約書だけだと契約に重みがないため、一方的解約自体は認めるが、それなりにペナルティを課す目的で設定されているのが「手付金」になるわけです。

これによって契約後、簡単には契約が破談になることは防げて、双方の利益を保護することができます。

手付金は買主が、売主に支払うことで解約手付の性質を有することになります。

そのため手付解約を申し出る側が買主の場合は、契約時に支払った手付金を放棄することで解約が成立します。

手付金を受領している売主が手付解約をしたい場合は、すでに受領していた手付金を買主へ返還し、同額の手付金を買主へ支払うことで解約が成立します。

 

売主も買主も同額の重たいペナルティが課されるから、契約が慎重になるわけじゃな。

  • 手付金は契約の重みを増すためのペナルティの役割を持つ

手付金の相場

手付金の相場は一般的には物件価格の5%〜10%程度と言われています。
私の実務上も多くて10%程度で、それ以上を設定することはほとんどありません。

まずはなぜ5%以上かというところですが、これは仲介業者に支払う仲介手数料の金額に由来するためです。

我々仲介業者は結婚相談所に近い役割であり、売主と買主を見つけてきて、契約内容に合意して契約した時点で成功報酬を請求することができます。その後に一方的な都合で契約が破談したとしても仲介業者は仲介手数料を請求できます。

結婚相談所でも条件に合うお相手を見つけてきてくれますが、結婚後離婚したとしても結婚相談所に支払ったお金は返ってこないですよね?

だから売買契約時点で仲介手数料の全額または半金を請求される不動産会社もあるかと思います。

さて、ここで問題です。

不動産売買契約後、買主側が他の物件に目移りして、やっぱり契約を破棄したいと手付解約を申し出た場合、売主買主はいくらの出費になると思いますか?

チッチッチッチッチッチ・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

分かりましたでしょうか?
答え合わせをしていきましょう。

まず、買主側は手付解約を申し出ているので契約時に設定した手付金額を失います。
手付金は契約時に支払うので、「支払った手付金を放棄する。」といった言い方が正しいですね。そして仲介会社へ媒介契約書記載の仲介手数料を支払います。(原則、物件価格の3%+6万円+税)

売主は、契約時に受領していた手付金が自分のものとなります。(返還不要となります)
そして売主も仲介会社へ仲介手数料を支払います。

この理不尽さがお分かりいただけるでしょうか?

売主は、買主の一方的な都合による解約にもかかわらず、仲介手数料を支払わなければなりません。

だから、5%なんです。

物件価格の5%を手付金で受け取っていれば、正規の仲介手数料(物件価格の3%+6万円+税)を吸収でき、解約された側に1円たりとも支出させずに済むからです。

また10%以下にする理由ですが、これは売主が宅建業者(不動産取引を生業としてる業のこと)である場合に手付金を10%以上に設定する場合、その手付金には保全措置を講じなければならないとする宅建業法が制定されているからです。

これはかつてバブル崩壊後の不動産会社が、多額の手付金を設定して売買契約し、計画倒産をして手付金を持ち逃げするという事件が多発したために買主保護の目的で制定された法律です。

そのため現在では保全措置を講じる手間を省くため、手付金は10%以下に設定されることがほとんどです。
むしろ10%以上設定すると売主の宅建業者から「手付金下げて」とお願いされる始末ですので、買主側からしたら契約しやすくなったと言えるのではないでしょうか。

このような慣例から業者売主だけではなく、個人間売買においても10%程度での手付金の設定が多いように思います。

もちろん現金で購入をしようとしてたり多額の自己資金を有してる方であれば、契約の重みを増すために手付金額を20%、30%とすることは全く問題ございません。(※ただし個人間売買に限ります)

物件価格が3,000万円ともなれば手付金で最低でも150万円は用意しなければならんのか・・・結構な額じゃな

  • 手付金の相場は物件価格の5%~10%

手付金はいつ支払う?

手付金は原則、売買契約と同時に支払います。

手付金はその性質上、契約時に支払う必要があります。
(※言ってみれば手付金は取引を無事に成立させるための人質のため。)

実際の立てこもり事件とかでも人質の引き渡しと警察への条件は同時に行われるからのお。

 

ただし実務上よく行われるのが「先払い」と「後払い」です。

注意

これからの内容は私が実務上行っている取引の慣例になりますが、各地域によって商慣習は大きく異なるでしょうから、愛知県以外での不動産取引で同じようなことがおこなわれているかは分かりません。そこはご理解ください

先払いについて

原則、不動産取引において契約成立前(契約書への署名押印前)に手付金を支払う行為は危険ですのでおやめください。 (持ち逃げされたら絶対に取り返せません。)

しかし建売住宅を販売する会社の中には、平気で契約日前日までに手付金の振込を請求してくるところもあります。

だいたい不動産営業マンがごねたら「じゃあ当日でいいですよ」って言ってくることが多いですが、リスク管理とかあまり考えていない未熟な営業マンやと建売業者の肩を持ちたい営業マンはしれっとお客様に「前日までに手付金振り込んでおいてください」って言います。

基本的に不動産仲介営業は新築を売りたがります。理由は顧客と建築会社から仲介手数料をもらえるからです。売主買主双方から仲介手数料を一回の取引でもらえる両手仲介取引を狙う不動産営業マンは多く、そのために建築会社の営業マンと仲良くなったり忖度をするようになります。だから顧客のリスクより、建築会社側の手間を考えて(忖度)、手付金の先払いを何の躊躇いもなく顧客に促したりします。

建築会社がなぜ先払いを促すかについてですが、二つ考えられます。

  • 意思を固めるため
  • 契約日当日、手付金が用意できないと事務手続きが煩雑になるため

1点目の意思を固めるためですが、物件の内覧後購入したい物件が決まったら「購入の申し込み」をします。
購入の申し込み後、およそ1週間程度で売買契約を行います。
この申し込みから契約までの1週間以内に多くのお客様が行うのが、本当に購入して良かったのかネットで物件を検索しまくったり知人や両親に相談したりネガティブ情報を探したりします。

特にまだ納得いってない状態で不動産営業マンから無理やり納得させられたような形で申し込みを書かされたりしたお客様にありがちな行動かと思います。

ここで一つの安心材料となるのが、手付金を先に支払わせることでもう契約から逃げられないと心理的にそう思わせることです。営業マンとしてもお客様から「手付金支払っておきました。」と連絡が来れば安心して契約日前日は眠ることができます。

2点目ですが、売主が宅建業者の場合、手付金を貸したり、後払いにしたりすると宅建業法違反になります。
買主(一般消費者=弱者)が宅建業者(取引のプロ=強者)に急かされて不利な契約をさせられるのを防ぐために、手付金を宅建業者側で用意したりそれにあたる行為をすることが禁止されています。

したがって、当日現金で用意するはずの手付金を買主が忘れてしまって契約時に手付金を支払えないとなってしまった際に、「後払いでいいですよ」は法律でダメと規定されているということです。

その場合は再度契約日の設定(リスケ)となります。
非常に面倒ですよね。
大手の不動産会社といえば横領等を防ぐためにも、契約日の設定や手付金等の入金日は事前に会社に申告していることが普通であり、それがズレるとなれば色々と報告書等が必要になることは容易に想像できます。

この2点のために手付金を事前支払いすることを普通にお願いしてきます。
ですが、よーーーく考えてください。
上記2点には買主側の都合は一切考慮されてません

そのため自身を守るためにも、手付金の先払いを請求された場合は、担当する営業マンに「NO」を突きつけた方がいいかと思います。

後払いについて

次に後払いについてですが、中古不動産の取引における個人間売買では、宅建業法の手付の誘引行為の規定は適用されません。

したがって後払いでも借りたりしても罰せられることはありません。
ただ借りるにしても仲介に入る宅建業者が貸すわけもないので(無論宅建業者が貸したら宅建業法違反になるからです)、キャッシング等消費者金融等から借りたらその後の住宅ローンの申し込みで不利に働くのでやめた方がいいかと思います。

どうして後払いにするかというと、最近は物騒なので現金を大量に持ち歩いたり家に置いておくことを嫌う方は多いかと思います。

契約日は多くの方が仕事がお休みの週末(土日)に設定されるかと思いますが、手付金といった大きなお金を引き出すのは平日に行う方が多いです。(土日のコンビニATMとかだと20万円程度が上限のため)
そのため平日に大きなお金を引き出して、契約日まで家に置いておいて、契約日にそれを契約場所まで持っていくのが怖いという方は振込による支払いを申し出る方が多いです。

ただ土日は振込ができないので、契約後最短の営業日に振込をするということを提案させていただくことが実務上多いです。

その場合は、契約書の特約には「本売買契約は、売主買主双方が契約書の署名押印後、買主が売主の指定する金融口座に手付金を振込送金し、売主が着金確認をすることを停止条件とする」

といった文言を記載してリスク管理をしています。

ただ、無用なリスクを避けるためできる限り当日現金で手付金をお支払いできるように努力したほうがよろしいかと思います。

  • 原則、手付金は契約と同時に支払う
  • 手付金の先払いはありえない
  • 手付金の後払いは可能(個人間売買の場合)。契約書の特約内容をよく確認すること

手付金は借りられる?

手付金に限らず不動産の購入には自己資金が必要なのか尋ねられることがよくあります。

結論から言うと借りられるがあくまで融資実行時に限る、となります。

まず不動産を購入するにあたり、住宅ローンを物件金額全額で借り入れることをフルローンといいます。
そして手付金は物件金額に充当されますので、言い換えれば物件金額の一部を先払いしていることとなります。

融資実行時には物件全額の融資金額が自身の口座に入金され、売主へは手付金を差し引いた残額を振込することになるので手付金が口座に残った形となり、手付金を借入れしたということになります。

MEMO

このことを我々営業マンはお客様に「手付金はあとから戻ってきます。」と説明します。

 

ただし質問の内容が、契約時に手付金を用意できない場合においてその手付金を借りることができるか?という意味での質問だった場合においては、難しいと言わざるを得ません。

まず融資申込先の金融機関に手付金を事前に貸してほしいといっても貸してくれるところはないでしょう。
となると消費者金融等からのキャッシングによる貸し付けですが、そんなことをしてしまうと契約後の住宅ローン本審査に大きく悪影響を及ぼしかねません。
結局足がつかない親族等からの現金借り入れになりますが、そういったことが難しいとなると対処が難しくなります。

担当営業にお願いして売主に手付金を限りなく低くしてもらったり、手付金の授受をせずに契約をしたりする方法になりますが、手付金が低すぎると契約自体がペラペラの薄いものになりますし、手付金の授受がなければ違約解除するしか解除する方法がありません。
違約解除は契約書の内容によりますが、一般的には売買代金の10%~20%程度の違約金を設定することがほとんどです。

つまり、全くのゼロ資金で住宅購入することは極めて難しいということです。

住宅購入後もいろいろとお金は入用になります。できたとしてもその後のキャッシュフローが確実に枯渇すると思うので避けたほうがいいでしょうね。

  • 手付金は借りることができる。ただし融資実行時。
  • 契約時に支払う手付金は自己資金で用意する必要あり。(決してキャッシング等は利用しないこと)
  • 全くのゼロ資金で住宅購入はできてもやるな!

手付解除の有効期日

いざ契約をしたあとに、家庭の事情や不慮の事故等による理由から手付解除を検討する事態になったとします。

個人間売買と宅建業者売主によって契約書の手付解除の取り扱いが少し変わります。

個人間売買の場合

個人間売買の場合、手付解除は以下のいずれかが早く到来するときまで有効となります。

  1. 手付解除期限を経過する日まで
  2. 相手方がこの契約の履行に着手したとき

手付解除期限は契約書に記載がある場合ですが、商慣習的に契約後1週間~2週間。長くて1か月程度かと思います。

履行の着手」という言葉が非常に頭を悩ませるのですが、明確にこの行為と定められているわけではありませんので、履行の着手だと主張したい場合は法廷で争う必要があります。
基本的には客観的に見て契約の履行、または履行に付随する行為を行っていると判断されれば履行の着手と認められるということです。

売主でいえば、土地の売買契約の場合に解体更地渡し、確定測量成果簿の引渡しが契約条件であった場合は、解体工事の着手や確定測量の着手を行えば十分履行の着手が認められるだけの客観的背景があるといえるかと思います。

買主でいえば、中間金を支払ったり、銀行等と金消契約をしたり引越し業者と契約した場合には十分履行の着手が認められるだけの客観的背景があるといえるかと思います。

宅建業者売主の場合

建売購入等で売主が宅建業者の場合は、

相手方が契約の履行に着手したとき

まで手付解除が有効となります。

また、宅建業者における契約の履行の着手とは所有権移転以外認められるものがほぼないです。
引越しもしなければ建築も買主のために建ててるわけではない(買主が契約解除してもどうせ建てるわけで)ので、履行の着手として認められる行為が所有権移転くらいになるわけです。

つまり買主は基本的に契約解除にあたって違約金を支払うケースはほとんどないかと思います。
いつまででも自分の都合で手付解除をすることができます。また手付解除はどんなに一方的な理由であれ、相手方は損害賠償を請求することができません。

こういったところでも買主は宅建業法に守られているといえますね。

契約時の解除の内容はよ~~く確認することが大切じゃな

  • 手付解除には有効期限がある
  • 履行の着手とはその行為を明文化されてはいないが、買主は中間金の支払いや金消契約、売主は解体や確定測量等の契約付随行為の着手
  • 宅建業者売主の場合は、買主は所有権移転のときまで手付解除できる



まとめ

手付金についてお分かりいただけましたでしょうか?

手付金は不動産購入においてイメージでよくもたれてる”頭金”として思われている方も多いです。
手付金の正しい理解を持っていただき、不慣れや頼りない営業マン、悪質な営業マンから不利なことを言われないようにしていきたいですね。

今回の授業はここまでです。
以下にまとめを載せて終わりにしたいと思います。

  • 手付金は契約に重みを付けるためのペナルティ
  • 互いに一方的に解約をできるが、申し出た者が手付金額を負担する
  • 手付金の相場は物件価格の5%~10%
  • 手付解約をしても仲介手数料の支払債務は原則免れない
  • 手付金の支払債務と売買契約は原則同時履行
  • 手付金の先払いは絶対避けること
  • (フルローンの場合)手付金も融資の対象である
  • 手付金も用意できない場合、住宅購入は避けましょう

それでは次回「#2住宅ローンについて」でお会いしましょう。

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