【不動産】都市計画の見直し~都市再生特別措置法って?~【買い方】

自宅近くの某カフェにて執筆

こんにちは。
不動産エージェントの満月?です。

本日は不動産の買い方の第1段「街(自治体)選びについて」の補足、
立地適正化計画
について説明します。

[toc]

立地適正化計画とは

当記事を見る前に、まずは以下の本記事を見ていただければと思います。

上記記事にて不動産購入において最も重要なポイントはであることを説明してきました。

どの街がいいのかは街力を見ることで誰でもある程度判断がつくようにしましたが、 さらにその自治体の中でもどのエリアが良いかの判断指標となるものがあります。

それが、立地適正化計画です。

いまやどこの自治体も少子高齢化や道路橋梁等構造物の高経年化の維持管理コストの増加によって非常に財政が苦しい状況にあります。
まさしくじり貧の状態となっており、この課題を打破するべく打ち出された法律として2014年5月に施行された『都市再生特別措置法』(通称:コンパクトシティ法)があります。

この法律を基に各自治体が都市計画区域の見直しをしたものが立地適正化計画です。

市計画というのは街が無秩序に開発されることを防ぐために、市街地を整備する区域(市街化区域)市街化を抑制する区域(市街化調整区域)と分ける線引きをすることを言います。

市街地を整備する区域には、さらに住居系地域商業地域工業地域と地域毎に建ててもいい建築物の制限を課しました。

この線引きがおおよそ昭和45年ごろです。。。

もうお分かりですね、この線引きじゃもう古いんです!

その時代は人口増加がそれはすごい増えた第2次ベビーブーム真っ只中です。

つまり、コンパクトシティ法が施行された背景は

「どんどん人口が減少していく現代において古すぎる都市計画を刷新しよう!」

ということでこのコンパクトシティ法に基づいて各自治体が立地適正化計画(通称:立適(りってき))を作成・公表しております。

先の都市計画では市街化区域市街化調整区域という形での線引きでしたが、”りってき”では都市機能誘導区域居住誘導区域が指定されるようになりました。

市は
限りある財源を効率的に市民に還元したいので、公共サービスをピンポイントで提供したいのです。だからそれに応じて、住民側も公共サービスを享受できるピンポイントのエリアに住んでくださいね。

とそういう意味でございます。

立適の主な内容

立適は主に以下の5つの内容を定めた計画になります。

立適の計画区域

立適の適用される範囲を定めます。基本は都市計画区域全体になります。

立適の基本方針

立適の定める意義として、街の将来像等を設定し、本施策を実現するための基本的な方針を示します。

都市機能誘導区域

医療・福祉・商業等の都市機能を都市の中心拠点や生活拠点に誘導し集約することにより、これらの各種サービスの効率的な提供を図る区域を設定します。

居住誘導区域

人口密度を維持することにより、生活サービスやコミュニティが持続的に確保されるように居住を誘導する区域を設定します。

防災指針

災害リスクを踏まえた課題を抽出し、居住や都市機能の誘導を図る上で必要となる、都市の防災に関する機能の確保を図るための指針を定めます。

 

本的には拠点性のある駅を中心に都市機能誘導区域を設定し、誘導施設(医療施設、社会福祉施設、子育て支援施設、教育施設、商業施設、行政施設等。)を集積させます。

その周りを囲うように居住誘導区域が設定されており、駅周辺に人を誘導させるようにしています。

防災指針まで設定している都市は少なく、ハザードマップに加えてなるべく災害リスクの少ないエリアに居住地を誘導することで、災害が起きた際の被害を抑えようとしているのがうかがえます。

来たる人口減少に備えて早い段階からこういった施策をとることは大事じゃな。
一朝一夕には居住地なんて移動させられないからのぉ

立適の作成状況

コンパクトシティ法が施行されてから約10年が経ちますが、これまでに”りってき“を公表している自治体は527都市になります。

今日の日本の市町村数は1718市町村あります(記事執筆時点)ので、およそ3分の1の市町村に留まるということですね。

都市計画の再編となると、かなり時間もお金もかかることでしょう。
体力のある自治体から先に進んでいるといった形です。

実際に立適を見てみよう

ここからはある自治体の立適を確認してみようと思います。

まずはこちらを見てください。


画像引用先:刈谷市HP

これは刈谷市の市街化区域とDIDを重ねたものです。刈谷市の市街地はほぼ市街化区域と重なっており、都市計画を施行した昭和45年以降、上手に住民の居住地を誘導できており、概ね都市計画の成功形と言えるかと思います。

※DID・・・人口集中地区といい、①4000人以上/㎢の人口が集まる地区が市町村内で隣接していることかつ②隣接する地域の人口が5000人以上の地区のこと。成熟した市街地と思ってもらっていいです

刈谷市は市内にJR東海道本線の鉄道駅と、名鉄名古屋本線と三河線の鉄道駅を有する西三河の交通の要衝です。
各駅を中心として市街地が形成されていることがよくうかがえる図です。

そして立地適正化計画とは、

基本的にこの人口集中地区に都市機能誘導区域居住誘導区域を設定していきます。

人口集中地区の多くは駅の周辺になるので基本的な考えとして、市街化区域内にある鉄道駅の半径800m圏内〜1km圏内に居住誘導区域を設定している自治体が多く見受けられます。

そのうち拠点となる街の中心駅の半径800m〜1000m圏内は都市機能誘導区域に設定しています。

それを踏まえた上で刈谷市の立地適正化計画を見ると面白いのです。

画像引用先:刈谷市HP立地適正化計画

上記は刈谷市の立地適正化計画の居住誘導区域の計画図です。

お分かりでしょうか?

刈谷市の将来ビジョンとして、各駅の市街地を切り捨て、JR「刈谷」駅と名鉄「刈谷市」駅に人口を誘導する舵を切っていることが見て取れる計画となっています。

刈谷市自体はトヨタグループの企業城下町であることから、雇用需要も多く、当面人口の減少は見込まれていないです。
しかし郊外拠点地域と中心地域との都市機能の集積度に大きく差がないことから、近年の中心部の人口密度減少が市の課題となっているそうです。

そこで都市機能の集積や人口の誘導を図るべく、このような立適を計画したとのことです。

都市計画というのは地価に大きな影響を与えるため、区域外と設定されることを嫌がる地主も多くいると考えられます。

ここまで区域を狭めて計画した刈谷市の将来ビジョンに本気度を感じたので、今回例として取り上げさせていただきました。

立地適正化計画の課題

立適の課題は2点あります。

1点目は『あくまで誘導』ということです。

都市計画の区域区分のように規制ではないため、居住(都市機能)誘導区域外で住宅や誘導施設等を建築する際は市町村長等の許可が必要かというとそうでもありません。
あくまで届出にとどまります。

自治体は「区域外に建てるんだ〜」と把握はできるものの、「建てちゃダメ」と反対はできないということです。

これでは計画区域誘導できるかは民意に依存するので、居住(都市機能)誘導区域が住民にとって魅力的に映るような施策を取らないとなかなか誘導はうまくできないかと思います。

メリットがないと人は動かないというわけじゃな

都市機能誘導区域に指定されると、容積率や高さ制限等の緩和措置が設けられるようになり、誘導施設(病院や行政施設、保育所等)を好立地に高効率で配置することができ、都市の魅力度を高めて居住地を中心部へ誘導することができると考えられます。

そのためにどう都市機能を集積していくかが各自治体の腕の見せどころだと思いますので、各自治体のHPよく確認してその都市の目指す将来ビジョンをチェックしておきましょう。

2点目は『忖度』です。

都市計画というのは地価に大きく影響を与えます。
今日では立適の区域内区域外ではそこまで大きな影響はありませんが、市街化区域市街化調整区域はその価値に非常に大きな差があります。

ですからむやみやたらに都市計画というのは変更できません。

さて、その自治体の昔からの大地主がいたとして、その地主が持つ土地のほとんどが立適の区域外に指定されるような計画を打ち出したとしたら果たして次もそこの市長・市議会議員でいられるのでしょうか?

私は各自治体の立適を見ていて、本当にこういった地主さんたちに忖度なしで計画区域を決めているのかは眉唾ものだと穿った目線で見ております。

例えば名古屋市で言えば、市域南西側は水害に大変脆弱な地域柄でありますが、土地価格が安いこともあって港区の茶屋新田に大規模な土地区画整理事業が行われています。

多くの分譲用地が市場に出ており、注文住宅を市内で建てたいけど市内の土地が高すぎるという庶民の注文建築需要を一挙に担っています。

古屋市港区はほぼ全域が津波災害警戒区域に該当します。
気象庁のHPで公表されてますが、津波が2mを超えると木造住宅はほとんど倒壊することが分かっています。

ですが、名古屋市港区の中で津波浸水高の想定が2mを超える区域が居住誘導区域に該当します。

これは愛知県HPに掲載されてる津波災害警戒区域の図書になります。

画像下部のイオンモール名古屋茶屋は名古屋の立適で地域拠点指定され、周辺が都市機能居住誘導区域に指定されています。

イオンモールのような誘導施設は造りがしっかりしてるので、防災上津波災害警戒区域内にあるのはいいんですが、都市機能誘導区域を囲うように設定されている居住誘導区域は、マンション建設を誘致するような区域ではないです。

名古屋市の立適ではこのあたりのエリアを『郊外市街地』として設定しており、良好な戸建て住宅街を形成・誘導するエリアです。

津波災害によって戸建が全壊してしまうと保険で対応することができず、命からがら逃げられてもその後の生活の立て直しが困難になります。(火災保険は下りず、住宅は無いのに住宅ローンだけが残ってしまうため。)

ここら辺に私はどうしても疑問符が湧いてしまいます。

こんなに災害に脆弱な土地柄でどうして居住を誘導する区域なのか・・・

名古屋市が指定する「駅そば市街地」は駅800m圏内のことで、多くはマンション建設が誘致されてる市街地になるので、人によっては確かに住みたくないと思うこともあると思います。

そういった方が郊外市街地に住居を移すのだと思いますが、だからといって津波災害に脆弱なエリアを居住誘導するのはおかしいのではないでしょうか。
別に居住誘導区域にしてしなくても住宅建築に関する規制は一切ないのですから区域外にしておけばいいと思いませんか?

本当にこの立適は名古屋市の将来ビジョンを反映して作成されているのだろうか。
忖度や癒着など何かしら大きな権力が介入しているのではないかと。
に話したようにこういうことが裏で見え隠れしているのではと思ってしまいますね。

災害に弱い土地柄に居住を誘導する理由はこれ如何に?じゃな。

だから立適を見れば問題ないというわけではなく、いろいろ自治体を選ぶにあたって多面的な角度から物事を見て自分なりに納得のいく答えを見つけ出して街選びをしていくことが大切ではないでしょうか?

最後に

いかがでしたでしょうか?

立地適正化計画も奥が深いと思いませんか?

人口減少、都心回帰と人口動態は今後も都心部への人の動きが止まりません。

コンパクトシティ法が施行されて10年が経ちますが、あと10年、20年後には各自治体が打ち出す都市計画・立地適正化計画(将来ビジョン)に基づいて街が再整備されていくか、このまま衰退していく街か、答えが出始めているんではないでしょうか?

物件情報だけではなく、もっとマクロの視点から不動産探しをしてみませんか?
物件探しの前に街探しから私と一緒にしてみませんか?

今後とも有意義な記事を書けるように頑張っていきますので、よろしくお願いいたします。

それでは次回「#2狭義の立地について」でお会いしましょう。

記事がよかったらリポストお願いします!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


PAGE TOP